読者の皆様へ
- nozomukawai
- May 24, 2021
- 3 min read
Updated: Jun 17, 2021
『古代エジプト全史』読者限定WEBは、インターネットの特性を生かして、拙著で紹介しきれなかった内容、関心の高いテーマや論争となっているトピック、エジプト考古学の新発見などについて画像を加えながら解説していく予定です。
また、参考となる他のウェブサイトへのリンクを紹介します。さらに読者の皆さんがエジプトの遺跡や博物館に行く際に有益な情報も発信します。
これから書いていく記事は、常に『古代エジプト全史』の内容と合わせて解説していきますので、お手元の拙著をご覧になりながら、ご覧ください。
△本書の内容について
本書は、現在のエジプトが位置するナイル川下流域に初めて人類が痕跡を残した旧石器時代からローマ支配時代までの通史を試みました。
日本で初めて出版された古代エジプトの通史は岡島誠太郎著『エジプト史』で、1940年(昭和15年)に平凡社から出版されました。以来、多くの先学の先生方が古代エジプトの通史を出版されましたが、エジプト学の研究が進み、またエジプトでの考古学的発掘調査による新発見や自然科学的な分析などの成果により、古代エジプト史を新しく書き換える必要があると考え、本書を執筆することを思い立ちました。
本書の特徴としては、まずエジプトの位置するナイル川下流域に最初に人類が痕跡を残した旧石器時代からローマ支配時代までの通史を記述した点にあります。
これまでの古代エジプトの通史は先史時代を短く扱う傾向がありましたが、文字のある無しではなく最初にエジプトのナイル川流域で生活をしていた人々がどのように社会や文化を発展させ、それが歴史時代につながっていったのかを理解することが重要であると考えて執筆しました。
次に、これまで中間期と呼ばれる時代は衰退期として解釈されてきましたが、それはあくまでも王権側からの史観であり、地方都市の様相に注目すると必ずしも衰退期とは言えず、それぞれの地方では豊かな発展が見られるという新しい考え方を紹介しています。
また、かつての古代エジプト史は文献史料からの記述が中心で、考古学は文献の記述を証明する補助学として位置付けられていました。しかし近年では考古学の成果が蓄積され、王朝時代であっても文字記録に残されない様々な有益な情報が明らかになってきており、そうした成果を積極的に反映させました。そして、これまで通説とされてきた歴史解釈についても最近の主要な学説を紹介しております。
さらに、自然科学的な研究の発展により考古学や歴史学の情報が確証されたり、書き換えられており、そうした成果についても反映させました。
しかし、本書で記述した内容はあくまで現時点での1つの解釈であり、他の研究者の考え方とは一致しない部分もあるでしょう。学説とは根拠があってそれを論理的に考察し、提示したものですが、今後の新しい解釈や新しい発見によって覆されることは少なくありません。本書に書かれていることを覚えるのではなく、常に疑問を持って読んでいただき、他の研究者の説などと比較しながらご自身で考えていただければ研究の楽しさがわかっていただけると思います。その意味で、付録として「古代エジプト文明への理解を深める資料案内」を掲載させていただきました。出版社のページ数の都合で大幅に削られてしまいましたが、この特設WEBで詳しく紹介したいと考えております。
すでにお気づきかと思いますが、本書は著者の専門とする新王国時代に比較的多くページ数を割いており、時代によって内容の深さにばらつきがありますが、筆者の力量不足によるものであります。今後、版を重ねることができましたら、より充実したものに改訂していきたいと思います。どうか読者の皆様からご批判、ご要望を賜れれば幸いです。ではご一緒に『古代エジプト全史』を学んでいきましょう。
付録も充実し、先王朝、初期王朝の記載も詳しく楽しく読ませていただいております。この特設サイトも堪能しています。 出版社による正誤表が見当たらなかったのでここにコメントさせていただきますが、p86の階段ピラミッドの平面の寸法は誤記ではないかと思われます。既に指摘されているかもしれませんが念のため 船山