ナブタ・プラヤの環状列石
- nozomukawai
- Aug 24, 2021
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Updated: Aug 29, 2021
本書→29-30頁
エジプト南部のアブシンベルから西に約100キロ、西部砂漠の北緯22.51度、東経30.73度の位置にナブタ・プラヤ という遺跡があります。ここは現在年間降水量100ミリメートルにも満たない砂漠ですが、今から9000年前には夏季に雨が降り、季節的なプラヤ(盆地)が形成され、動植物が豊富な場所でした。かつてはここでエジプト最古の農耕牧畜が始められたと考えられていましたが、最近の研究ではまだ農耕牧畜が開始されたとは確定されていません。ここでは野生牛の血液やミルクを主に利用していた遊牧民が季節的に居住し、ソルガム(モロコシ)やミレット(キビ、アワ、ヒエなど)の雑穀を食料としていたと考えられています。
この遺跡の中で発見された最も重要な遺構は、発掘調査を行った米国の考古学者ウェンドルフが「カレンダー・サークル」と名付けた環状列石です。この環状列石は、正円ではなく、長径5mほど、短径3mほどの楕円状に石材が配置され、対をなす大きめの平板が4組、十字状に配列されています。そのうちの2組はほぼ正確に南北を指し、もう2組は北から南に70度ふれた位置にあります。この70度の方角が夏至日の太陽の日の出の位置を指します。この位置から太陽が昇れば雨季の始まりとなり、ここで生活していた遊牧民にとって恵みをもたらす重要な時期の到来を告げたのです。
ナブタ・プラヤ遺跡は、北回帰線近くに位置し、夏至の前後3週間ほどの間、正午の太陽は天頂に昇り、直立物は影を射さなくなります。研究者たちは、ナブタ・プラヤの環状列石は、夏至前後に天頂を通る太陽の運行に対応した物だっただろう、と推測しています。特別な石材は、夏至前後の季節を確認するための観測道具だったとみなされています。また、南北の線は、おそらく夜空を観察した際に北極星を発見し、それに対応する形で南も認識されたのでしょう。
ちなみに現在ナブタ・プラヤ にはこの環状列石は存在せず、アスワンのヌビア博物館の敷地に移設されており、見学できます。


現在アスワンのヌビア博物館敷地内に移設されたナブタ・プラヤの環状列石
ナブタ・プラヤの位置についてはこちらをご覧下さい。
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