古代エジプトの「王名表」と「パレルモ・ストーン」の最新研究
- nozomukawai
- Jun 25, 2021
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本書→15-17頁
古代エジプトには、歴代の王名と称号を列挙した「王名表」が残されており、古代エジプトの歴史を再構築する際に極めて重要な史料となっています。これらは、彼らが歴史的な記録を残すために書いたことを目的したわけではなく、むしろファラオの正統性を示すために書かれたものと言えます。本書では、第1王朝初代とされた伝説の王、メネスから62人の王を記した「カルナク王名表」、第19王朝に編纂された「アビドス王名表」と「サッカラ王名表」についての解説がありますが、ここでは写真を掲載して解説します。また、王のリストだけでなく、初期王朝時代と古王国時代の歴代の王名と治績を記した「パレルモ・ストーン」とその最新研究についても解説します。
◆ 「カルナク王名表」
テーベのカルナク、アメン大神殿の奥に位置するトトメス3世祝祭殿の南西角付近に位置する壁面に表された王名表で、メネス王から62名の王名が記されたとされていますが、一説によればスネフェル王から61名の王名が記されたとされています。そのうち現在判読可能な王名は39の王名とのことです。現在はパリのルーヴル美術館に展示されています。

カルナク王名表(https://en.wikipedia.org/wiki/Karnak_King_List#/media/File:Karnak_King_List_Drawing.png)

カルナク王名表(ルーヴル美術館蔵)©︎ Nozomu Kawai
◆「アビドス王名表」
アビドスのセティ1世記念神殿のものは唯一原位置に残っているもので、メネス王からセティ1世までの76人の王名が記されています。付近のラメセス2世の記念神殿の王名表は現在大英博物館に展示されています。

アビドス王名表(アビドス、セティ1世記念神殿)©︎Nozomu Kawai

アビドス王名表(アビドス、ラメセス2世記念神殿出土、大英博物館蔵)©︎Nozomu Kawai
◆「サッカラ王名表」
サッカラ王名表は、先祖の歴代の王を王ではなく貴族が崇拝して記した例で、サッカラのラメセス2世の時代の高官テンロイの墓から発見されたものです。これは第1王朝からラメセス2世のまでの57人の王名が記されています。現在は、カイロ・エジプト博物館に展示されています。

サッカラ王名表(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:SaqqaraKingList.png)
◆「パレルモ・ストーン」
第5王朝に年代づけられる玄武岩製の石碑で、両面に神話の時代以来の古代エジプトの歴代の王たちの治績が刻まれています。主な断片がシチリアのパレルモ考古学博物館に所蔵されていることから、「パレルモ・ストーン」の名がついていますが、他の断片はカイロ・エジプト博物館とロンドン大学のピートリー博物館に所蔵されています。石碑の本来の大きさは、長さ2.1m、幅0.6mほどであったと考えられていますが、そのほとんどの部分が現在では失われています。
近年では、チェコ、カレル大学のエジプト学研究所のチームがRTI (Reflectance Transformation Imaging)という様々な角度の光源から斜光で光を当てるデジタル写真記録の方法により、これまで読み取れなかった文字の解読を試みており、近々その成果が発表されるとのことです。

パレルモ・ストーン(シチリア、パレルモ考古学博物館蔵)
(https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/77/Pietra_di_Palermo_%28geroglifici%29_1.jpg)
・RTIについてはこちらをご覧ください(英語)
・チェコのチームによるRTIを駆使した最新の「パレルモ・ストーン」の研究(英語)
・古代エジプトの王名を網羅した便利なウェブサイト(英語)
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